2021研究シーズ集_211012
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高精度分子シミュレーションで      創薬研究を支援します 実用化イメージ、想定される用途・高精度分子シミュレーションに基づく、骨粗しょう症、前立腺癌、炎症性疾患の新規治療薬の提案・開発企業等への提案私たちは、計算機を用いた分子シミュレーションのみ実行可能であり、本研究で提案した化合物を実際に合成し、生化学実験でその有効性を確認するためには、実験家との共同研究が必要になります。情報・知能工学系 量子生物学研究室http://kservice.klab.cs.tut.ac.jp/優位性・小さなフラグメントに分割しフラグメント単位での計算から全体の電子状態を構築するため、計算コストが削減でき生体高分子にも適用できます。・フラグメント間の相互作用エネルギーを得ることができるため、タンパク質と薬の候補化合物間の特異的相互作用を高精度に評価できます。図1 VDR残基(Tyr143, Asp144, Arg274, His305)と新規誘導体D5bとの相互作用構造図2 His305とHis397のプロトン化状態に依存するVDR残基とリガンド2の相互作用構造実用化に向けた課題・提案した薬の候補化合物の合成・化合物の生化学実験、動物実験、ヒトへの治験キーワード分子シミュレーション、フラグメント分子軌道、インシリコ創薬、タンパク質リガンド相互作用、アンドロゲン受容体、 ビタミンD受容体、エストロゲン受容体、阻害剤、キラリティ−108−研究段階基礎実証実用化準備バイオ・ライフサイエンスFMODDコンソーシアムでの核内受容体の 機能解明、新規阻害剤の提案情報・知能工学系栗田 典之 准教授研究者情報:https://researchmap.jp/nkuri0303概要FMO創薬コンソーシアム(FMO Drug Design Consortium: FMODD)では、フラグメント分子軌道(Fragment Molecular Orbital: FMO)法を創薬研究に活用することを目的に研究活動を進めています。当研究室は、このコンソーシアムに参画し、核内受容体の機能解明、及び受容体に対する新規阻害剤を提案しています。従来技術・タンパク質や核酸等の生体高分子に対する量子化学計算は、計算量が膨大であり、実行困難です。・古典力場を用いた分子力場計算はタンパク質と薬の候補となる分子間の相互作用を正しく記述困難です。特徴フラグメント分子軌道法を活用し、ビタミンD受容体(VDR)、アンドロゲン受容体(AR)、レチノイン酸受容体(ROR)などのタンパク質と様々なリガンド(薬の候補化合物)間の相互作用を計算し、下記の成果を得ました。1.VDRとビタミンD誘導体間の結合親和性を解析し、誘導体中のOH基の位置を調整することで、VDRにより強く結合する新規誘導体D5bを提案 (図1)2.VDRとキラリティの異なるリガンド間の相互作用を解析し、キラリティの違いが、リガンド近傍に存在するVDRのヒスチジン残基のプロトン化状態に変化を誘発することを解明 (図2)3.既存の阻害薬よりもVDRに強く結合可能な新規阻害剤を提案(製薬企業、大学の薬学部の研究者との共同研究)⇒VDR異常により発症する骨粗しょう症の治療薬の提案4.ARと様々な化合物間の相互作用を解析し、その結果をベースにARにより強く結合する新規阻害薬を提案⇒AR異常により発症する前立腺がんの治療薬の提案5.RORに作動薬、逆作動薬が結合した際のRORの構造変化を詳細に解析し、薬の作用機構の相違を解明⇒ROR異常により発症する炎症性疾患の治療薬の提案

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